【中】の食材の水分の消失を最大限に抑えて加熱されている状態
【外】衣の水分が完全に蒸発して、その場所が空洞になりかつ粉が完全に加熱された状態
揚げ上がりに余分な油が付加していない状態
しかも異なる食材からなる2層構造を高温の油に浸けるという大胆な行為でそれぞれを適切に加熱する
_φ(・_・ もくじ
例)天ぷら
天ぷらは衣に包まれているので、油の中で【中】の食材は油に直接触れません。衣から間接的に熱が伝わり食材が温められるのですが、この時、食材内の水分や油分が間接的に食材自体を加熱しているんです。
天ぷらは一般的に高温の油で調理します(約180度)ので揚げ上がりまでの時間が早いです。高温の油で衣の水分を飛ばし、【中】の食材を蒸し焼きにするようなイメージですね。
蒸された食材は衣に包まれたままなので(空気に触れていない)保温され、保湿された状態です。一方、衣の方は水分が抜けてスナック菓子のような軽い食感になっています。この食感のコントラストこそが天ぷらの美味しさの特徴なのです。なるべくしてなった天ぷらは作り方は単純でも実は理にかなったすごい料理なんですね。というわけで、中の食材の水分は油に触れていない分かなり残ります。これがジューシーさですね。
衣がカリッとした食感になるのは、衣の中の水分が蒸発してその部分が空洞になって空気に置き換わるからです。これで「外はカリっと中はジューシー」の美味しい揚げ物の出来上がりです。
美味しさの定義が理解できたらその結果をピンポイントで狙っていきましょう。
そもそも揚げ物とはどのような食べ物なのか?
揚げ物の構成要素【中】と【外】
どんな揚げ物にも中と外が存在します。
- 天ぷら・・・・天ぷら衣と食材
- からあげ・・・粉と鶏肉
*素揚げの場合でも微妙に中と外が存在します。
今回は揚げ物を【中】と【外】に分けてそれぞれの美味しさについて分解考察していきます。
美味しい揚げ物の鉄板の定義を挙げるとしたら?わかりますか?
ここで特筆すべきは独特な加熱プロセスです。
解説 【中】
食材によって水分や油分の量が異なるので一括りにできないのがもどかしいですが、そこも料理の楽しさの一つですね。
と言っても始まらないのでとりあえず比較的水分量の多い食材である肉もしくは魚介類のパターンを見ていきましょう。
加熱の過程
上でも記しましたが、熱の伝わり方は下の図のようになります。
熱は外側から順番に伝わってきます大まかには理解できると思いますが、一部難しい点がありますよね?
「食材の水分や油分」のところですね。ここがこの授業の要点です。
ここを押さえておけば、食材の加熱過程で迷うことは少なくなるのではないでしょうか?
「余熱で火を通す」という言葉を聞いたことがないでしょうか?
焼いた肉や魚をフライパンから外し、放置しながら温めていく手法です。まさにこの余熱こそが水分や油分が蓄えている熱なのです。タンパク質である筋肉の加熱は時間がかかります。例えばカラカラでカチカチの肉だとかなり長時間加熱しないと食材内部には熱は到達しません。水分や油分のおかげで加熱スピードは上がりますし、柔らかさや食感としての美味しさも加わるのです。良いことだらけですね。料理人のほとんどがこの余熱と直接的加熱を自在に操って独自の素晴らしい加熱法を確立しています。
この、水分や油分による間接的な加熱(揚げ油による加熱を直接的加熱とした場合)は本当に侮れません。
プロ達も何回も試行錯誤している、料理人の永遠のテーマです。
この加熱プロセスを理解していないと、調理工程の目的や美味しさを見失った料理になってしまいます。
正しい目標に向かって正しく進んでいくことが常に美味しい料理を作るただ一つのコツなのです。
【中】の食材の水分の消失を最大限に抑えて加熱されている状態
【外】衣の水分が完全に蒸発して、その場所が空洞になりかつ粉が完全に加熱された状態
揚げ上がりに余分な油が付加していない状態
しかも異なる食材からなる2層構造を高温の油につけるという大胆な行為でそれぞれを適切に加熱する
解説 【外】
衣といっても多種多様。衣自身の水分量も違えば粉の特徴も違います。
これも一括りにすることはできませんが、それも料理の楽しみ笑。楽しんでいきましょう。
天ぷらの衣
天ぷらの衣の材料といえば、薄力粉、水、卵です。
ここではわかりやすく理解するために「粉」と「水」で説明していきます。
粉と水を混ぜ合わせて衣の生地にするのですが、その際に混ぜ過ぎたらいけないという注意点があります。グルテンを出さないほうがカリッとした食感になるからです。またどこかでグルテンについては詳しく解説しようと思いますのでさらっといきます。
衣の材料とパンの材料は同じです。厳密にいえば塩が入るとかオイルが入るとか色々ありますが基本的には同じです。では何が違うかというと水分量と捏ねるか捏ねないかです。
パンはしっかり捏ねてグルテンを強くして焼き上がりのテクスチャーをもっちりした感じにします。なので天ぷらの衣がもっちりしないようにするため、捏ねない=混ぜすぎないということなのです。
さてその天ぷらの衣ですが多めの水に粉が混ざっている状態ですね。
2つの素材を分けて考えてみましょう。
水
水の沸点は100度ですから高温の油(約180度)に入れると即座に沸騰し蒸発します。
結果、衣への加熱が不十分でない限り、衣から水はなくなります。
粉が加熱されて固まって、水がなくなるので水があった場所が空洞になります
粉
先ほどから「粉」「粉」といっておりますが、衣に使われる粉は小麦粉や片栗粉、米粉です。
天ぷらでは小麦粉の薄力粉を使います。
水と混ぜて油の中に入れると、粉の部分は固まります。これがサクッとした食感の元になります。
衣のまとめ
衣がカリッとした食感になるのは、衣の中の水分が蒸発してその部分が空洞になって空気に置き換わるために粉の部分が儚い食感になるからです。
ここでの注意点としてはその空洞に油を残してはいけないということです。
油の効率良い切り方はまた違う機会に説明しますね。油についてのまとめとかもいいかもしれません。
美味しい揚げ物とは:まとめ
外はカリッと中はジューシー。美味しさの定義の王道ですね。
ここまで読んでいただいたら大体の調理過程のロジックは理解できていると思います。
まさにこの結論のスローガンを念頭に置いて揚げ物にトライしてみてください。
何も考えずに天ぷら鍋の前に立つのではなく、きちんとゴールを見据えて確実に正しく向かっていくイメージで調理すると今までの天ぷらやからあげがとても美味しいものになりますよ。
あと、揚げ物でもっとも大事なのは「揚げたてを食べる」「揚げたてを食べてもらう」ということをお忘れなく。
今回もありがとうございました!