牛肉よりもイージーで仕上がりがブレにくい豚肩ロース。
肉の持つ特徴をしっかりと理解した上で行う調理はブレ幅を少なくして再現性を高めます。
今回紹介する方法はおうちの設備でも全く問題ありません。ガスでもIHでもOKです。
では目指す仕上がり像を明確にして進めていきましょう。
_φ(・_・ もくじ
分厚い豚肩ロースを焼くための道具
まず調理に取り掛かる前に今回使用する調理器具や調味料を紹介します。
いきなり始めても「そんな道具ない!」ってなるかもしれませんからね。
今回必要なものは以下の通りです。
- フライパン(材質問わず・テフロン可)
- トング
- パイ皿またはバット(なければ普通の皿)
- 芯温計
- 塩と少量の油
- 厚さ3cmくらいの豚肩ロース
多分どこのお家にもあるものだと思います。(肉以外)
そうです今回は簡単に再現できるのです。心配要りませんよ!
豚肩ロースという部位の特徴
ではまず部位の特徴を理解して目的の食感に近づけていけるようにしましょう。
水分が抜けにくい構造
赤身の筋肉部と脂肪が入り混じった状態です。
この構造により、赤身の部分が守られ水分が消失しにくいようになっています。
塩を振ってしばらくおくと浸透圧により内部の水分が出てきますが、豚肩ロースの場合はほとんど出てきません。
もともと水分が少ない部位なのかもしれませんが、脂がそれを補っています。
硬くなりにくい/硬くなっても良い
前述のとおり筋肉と脂が入り混じっているのでどうカットしてもバランス良くなります。
脂の部分は焼いても硬くならないので、柔らかさを表現するのに一役買っています。
また逆に脂があるからこそ強めにしっかりと焼いても大丈夫なのです。
これでこの部位が失敗しにくいものだと言う事がわかりましたね?
脂のない牛赤身肉だとかなり気をつけないと硬く仕上がってしまいますが今回はイージーです。安心してください。
豚ロースと比べて
豚ロースは豚カツや生姜焼きに使われる部位ですが、この部位の特徴は「繊細な肉質」です。水分も多く厚切りにしてジューシーさを感じさせるのは少し難しくなってきます。
また、筋肉と脂がはっきりと分かれているので食べる際に一緒に口に入らない場合があります。これは大したことのないように見えても結構需要な味の要因になるのです。
対して豚肩ロースは「赤身の味が濃い」「程よい脂感」が持ち味。
そして食べる際に「筋肉と脂」が同時に口に入るのが最大の特徴です。
では次でいよいよ焼いていきますね。
焼き方解説(=頻繁にひっくり返す)
- 少量の油をフライパンにひく
- 冷蔵庫から出した肉に塩をしてフライパンに
- 弱〜中火で焼き始める
- 1分おきにひっくり返す
- 目標芯温55度になったらパイ皿へ
- しばらく休ませて出来上がり
火加減は弱〜中火。1分おきにひっくり返すだけの簡単な方法です。
それ以外は何も難しいことはありません。めっちゃ簡単です。
誰にでも再現できますが、一つコツがあります。それは、
肉の温度が伝わっていく様を想像しながら加熱するということ。
しばらくひっくり返して加熱したら芯温計で測って、どのくらい温度が上がっているのが目視して理解しましょう。そうすれば今回の経験は今後に役立ちます。
今回の最終目標(=断面がグラデーションかつ芯温約60度)
最終的にどのような状態を目指すかを具体的にイメージすることが料理の上達の近道だということはもうお分かりだと思います。
今回の目標形態は
- 外側がきっちりメイラード反応している
- 過熱後の芯温約60度
- 上記2つを両立させると、断面はグラデーションになる。
理想の断面グラデーションは上の画像のようになります。
外側はきっちり水分抜いて火を通した状態で、内部は肉汁を含んだままの状態になると
切って口に入れたときに食感が複雑になり脳に伝達する情報も多くなります。
外側がしっかりと焼かれていることで咀嚼回数も増え、肉の味わいを存分に堪能できることになります。よって「美味しい」を意図的に表現する事ができるという事なのです。
内部へ熱を伝えていく
両面をゆっくりと交互に加熱することで、じわじわと中心に向かって温度が上がっていきます。
最初は不安かもしれません。初めの5〜6回は全く内部に熱が伝わっていくような様子は見られないと思いますが、そこを通り過ぎればどんどん内部は温まっていきます。
外側は次第に色づいていくので心配はご無用。もし目標芯温になっても外側の色が不安だったら迷わず強火にしてガッと焼いてください。
両面から徐々に熱を入れていきましょう。それだけなのです。
芯温55度で加熱をやめ、休ませると60度くらいには上がります。皿に盛って食卓にはこび、いただきますをして口に入れるまでに適した温度になっています。ご心配なく。
ちょこコラ:旨味を閉じ込める?
【外側を焼き固めて旨味を閉じ込める?】
上のようなセリフ、どこかで聞いたことはないでしょうか?
はい。昭和の昔、そのような都市伝説がありましたね。
はっきり言いますと、そんなことはできません。
外側を強く焼き固めたところで内部が一定温度以上に加熱されると、いとも簡単に水分は出てきます。
筋肉が加熱により収縮するので「スポンジを絞る」ような感じで内部の水分はじゅっと出てきます。また、こんなことする人はいませんが人力で絞っても出てきます。
外側を焼いて旨味を高める行為は間違いではないのですが、閉じ込めることはできないのです。
まとめ
今回は冷蔵庫から出したての冷たい肉を焼いていきましたが、それにも実は理由があります。
それは「温度が上がりにくいから」です。
薄い肉なら内部温度はすぐに上がってしまい、ジューシーさを表現するのは至難のわざですが、
厚みがあってかつ冷たい肉だと温度が上がるのが遅くなるので、
実は難しいと思っていても失敗しにくいのです。
冷たい肉のメリットを生かした調理ですね。
ぜひご家庭で再現してみてください。
今回もありがとうございました!