今回は低温調理器で「牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」を作ってみました。
低温調理は「真空パック+温度設定⇨長時間放置」なので簡単なのですが、要点を見落とすといとも簡単に失敗してしまいます。
この記事では初回から失敗しない方法を解説していきます。
- マリネ時のワインに関する注意点
- アルコール残量
- 肉の味と柔らかさ
_φ(・_・ もくじ
牛ほほ肉赤ワイン煮込み|目指す完成形と準備
どんな料理にも言えることですが、必ず完成形をはっきりと認識して作り始めることが大切です。
今回の「牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」の完成形は以下の通りに設定します。(理由も後述します)
- 肉の味が抜けていない状態
- 十分に柔らかい状態
- アルコールが完全に飛んでいる状態
- ソースは濃い色である
肉の味が抜けてしまう|煮込み料理の危険性
牛ほほ肉は頑丈な筋肉と筋で構成されており、脂はほとんどありません。
実は脂は、肉の味や柔らかさにかなり影響するものなのです。
- 脂は肉の個性的な香りを主張する
- 和牛の脂、羊の脂など
- 脂は柔らかい
牛バラ肉などの脂と筋肉が層になっている部位は、ある程度雑に煮込んでも柔らかさと脂の風味で美味しさを表現しやすいです。
それに対して牛ほほ肉は脂がほとんどない部位なので、筋肉内にある程度肉汁を残した仕立てにする必要があります。
ですから、牛ほほ肉を煮込むときは加熱温度を設定して長時間煮込むことができる低温調理器が最適と言えます。
十分に柔らかい状態|脂がない部位の煮込み温度
では何度で加熱するのが最適なのでしょうか?
十分に柔らかくするには圧力鍋を使うのが一番早く簡単だと言えますが、長時間煮込むと筋肉がパサパサになって肉の味が煮汁へ出ていってしまいます。
タンパク質が変性をはじめる温度が65.5℃、コラーゲンが変性をはじめる温度が68℃です。
そしてコラーゲンが加水分解しゼラチン化しはじめる温度は70〜80℃です。
以上の数値から設定温度は70〜90℃からの選択となります。
低温調理器は85℃に設定
ソースを濃い色にするには
赤ワイン煮込みと名乗るからにはワインも料理の一部なので、どんなワインを選ぶのかが重要になってきます。
元々パッシートなどの濃い色のワインを使うなら問題ないですが、薄い色のワインなら少し煮詰めてから使うと良いでしょう。
アルコールを完全に飛ばすには
真空調理するので加熱しないワインをそのままパックしてしまうとアルコール分はそのまま残ってしまいます。
マリネする前段階でワインを加熱してアルコール分を十分に揮発させましょう。
アルコールによって肉を柔らかくするのではなく、加熱によって柔らかくするので問題ありません。
これでお子様も安心して食べられますね。
マリネする前にアルコールを飛ばしておく
肉の掃除とマリネ
では早速調理に取り掛かりましょう。
低温調理器にかける前に下準備をしていきます。
肉に塩を振って、アルコールを飛ばしたワインとミルポワを入れ真空パックしたら、あとは簡単です。
- 余分なスジをとる
- 約1%の塩を振る
- ミルポワとワイン
余分なスジをとる
分厚いスジも加熱によって柔らかくなるので取る必要はないはずですが、そのまま加熱するとその部分だけ「トロッとした食感」になります。
全体の量、肉とスジのバランスを考えて、一口ずつ食べる時に違和感がないように少し取り除くといいですね。
取り除いたスジは捨てずに肉と一緒に真空パックに入れて旨味を高めましょう。
ここでポーションカットはせず、1枚のまま真空パックしましょう。
約1%の塩を振る
掃除した肉の重量の1%の塩を振り、最低でも半日浸透させます。
この下味は非常に重要で最終の塩分に関わってくるので忘れないように。
塩分が浸透した肉は仕上げ時に違和感なくまとまります。
ちなみに胡椒はここではしません。なぜなら真空パックで密閉状態が長く続くと胡椒の風味が強くついてしまうからです。
ミルポワとワイン
ミルポワはお好みでOK。実は真空調理ではミルポワは少なくても機能するのがいいところです。
加熱の必要はなく生のまま入れます。
ローリエを入れる場合は真空袋の大きさによって必要量を変えましょう。
今回は低温で長時間加熱するので香りは十分に抽出されます。ワインの風味を邪魔しないよう意識して量を調節してみましょう。
- 違和感の残るスジはとる
- 1%の塩をして半日以上置く
- ミルポワは生でOK
- 胡椒ふらない
調理と仕上げ
85℃まで上がったら真空袋を入れます。
完全に水面以下になるようにしてください。
高温なのでポットの上部にラップで蓋をして水の蒸発を防がないと、水位が下がってエラーになります。
オーバーナイトクック
ここで重要なポイントは「オーバーナイトクック」
オーバーナイトクックとは文字通り「夜通し調理すること」です。
低温調理器は電気で動作するものなので安全性が高く、ホテルや大型飲食店ではオーバーナイトクックは人件費が不要な調理なのでよく行われていますよ。
深夜の電気代が安い契約だとよりいいです!
最低8時間加熱
加熱時間は最低8時間を目安に考え、長くなってもほとんど品質は同じなので12時間になっても構いません。
就寝前にセットして朝には出来上がっています。(本当に楽でいいですよ)
85℃の加熱なので、筋肉は肉感を残したままスジは柔らかくなります。
加熱が終わると食べる分以外はパックのまま冷却して冷凍保存しておけば保存食としてストックしておけます。
マリネ液の仕上げ
袋を開封して肉とそれ以外に分けましょう。
加熱が終わった肉は縮んで変形していますので、一人前の大きさにカットします。
カット面が鮮やかな色になっていますが、家で食べる分には問題ないでしょう。もしお客さんに提供するのなら、カットしてから鍋でマリネ液と30分ほど煮込めば色は気にならなくなります。
マリネ液(ワインとミルポワ)はミルポワを捨ててワインのみ煮詰めてソースとしても良いですが、今回はミルポワと一緒にミキサーして濃度のあるソースとしました。
ほほ肉のゼラチン質が溶け出しているので濃厚な口当たりになります。野菜のピュレをま混ぜることで軽減を図ります。
塩分調整して味を決め調理完了です。
付け合わせはシンプルにポレンタで。
僕が使っているのはこのポレンタです⬇︎
- ポット上部にラップで蓋
- オーバーナイトクック
- マリネ液とミルポワはミキサーしてソースに
- ポレンタを添えてシンプルに
牛頬肉は煮込みに時間がかかるけど、低温調理器でほったらかしにするだけなので簡単です。
ソースもミルポワを無駄にしない仕立てなので、ご自宅でも快適に料理できますよ!
付け合わせは伝統的にポレンタがよく合います。
ぜひ作ってみてくださいね!
また次回の記事でお会いしましょう。
ありがとうございました!